シナリオ

- 関係者以外閲覧禁止 -

このページは応募者様限定公開ページです。
事務所所属の方が出演許可を得るためにマネージャーさん等に見せる目的以外、親族含めて第三者に公開を禁止いたします(個別のケースの対応はきりがないため一律禁止)。

■ご応募の流れ等につきまして

 

・「製作概要」の内容を承諾し、台本を読んだうえで出演希望の場合は、原則1週間以内に、以下の事をご記載、全身とお顔の写真合計2枚添付のうえ、starcirclingrailway@gmail.com までご一報ください。

・出演をご希望されない場合はお返事不要です。

・記入漏れや添付忘れなどは充分ご注意ください。

・送信後、こちらから4日たっても返事がない場合は、迷惑メールフォルダなど様々なフォルダをご確認のうえ、お手数ですが再度のお問い合わせ(システムの問題で返信できないこともあるので、返信用に別のアドレスも添えてください)または別のアドレスからご連絡ください。

・登場人物は年齢や特性など参加者の個性を反映させて、変える可能性があります。

●応募用記載事項

 

※件名は「最初にお問い合わせいただいたときの【映画出演の件】」そのままで大丈夫です(こちらで変えることもありますが、基本的に応募者様は何もしなくて大丈夫です)。

以下が記載事項です

1:お名前(ふりがな):

2:生年月日(西暦):

3:好きな映画3つ:

4:趣味(映画・音楽鑑賞以外):

5:目指している俳優(いれば)

6:特技、資格(あれば):

7:現時点でわかっている埋まっているスケジュール(あれば):

8:話せる外国語(日常会話レベルでも)や方言(あれば):

9:出演歴や演技を学んだ場所(あれば):

10:事務所など所属先(あれば):

11:2月15日までの中で、ご希望のオーディション日時を3つご提示ください:時間は1時間ほど。幅がある場合は15時~19時のように記載してください。方法はオンラインになります。

※日程をご提示いただいても、他のご予定が入れば優先していただいて問題ございません。

12:ご質問など(「会ったときに聞こう」ではなく、事前に何でもお問い合わせください):

※その他:ご自身でお持ちの宣伝素材などがあれば、別途添付していただいても大丈夫です。

13:演じたい役を下記よりお選びください(複数可、作品名と名前をコピペしてください)

①うちのねーちゃん、星を救う -The Better Moment of Our Lives-

・成田理絵(なりたりえ)
・成田絵里菜(なりたえりな)

②海にて王様は星になりたがる -Dear innocent world-

・草木美奈(くさきみな)
・岡田恵梨香(おかだえりか)

③多元な彼女 -Becomig who i was-

・宮島百合子(みやじまゆりこ)

④七等星(ななとうせい)の夜を超えて -Lovable Fools On The Planet

・村中蓮(むらなかれん)
・田中亜美(たなかあみ)
・大友春奈(おおともはるな)

⑤星の終わりとハードボイルドネバーランド -We wanna be there-

・太田宮子(おおたみやこ)

以下がシナリオです↓

●Nはナレーションです。

●脚本を読むときはセリフばかり読まないで、「画」を想像してください。

● ☓ ☓ ☓ は同じ場所のシーンの中で別の区切りです。

●「・・・」は表情を撮っていると考えてください。

●モノローグ主体の作風は、過去作品を抜粋したこちらをご参照ください https://www.youtube.com/watch?v=HWbmAHzBDek

✨1.うちのねーちゃん、星を救う

 

S:イメージカット:世界の人々 BGM

理絵N「明日世界が終わるなら何をしたい?どこに行きたい?誰と過ごしたい?世界が終わる直前になって、『なんでやんなかったんだっ!?』って後悔するヤツはたくさんいるに違いない」

 

Sイメージカット

宇宙に浮かぶ地球、その横に動く隕石、宇宙から高円寺の酒場へズームイン。

理絵N「でもあたしは違う。明日世界が終わろうが、アル中の診断結果待ちだろうがっ!あたしはっ!」

 

S立ち飲み屋のカウンター席 ※イメージはこちら

正面を向いてカウンター前に立って、日本酒・ビール・ワインなど多くの酒を飲んでいる理絵

理絵N「酒を飲む!後悔しない人生を選ぶ!」

 

Sイメージカット 

電車内・駅構内を移動するB。高円寺の駅から出てくる。

 

S立ち飲み屋のカウンター席

正面を向いて生ビールをジョッキで飲んでいる理絵。

理絵の横に人が入れ替わりやってくる。話しかけられてもずっと正面向いたまま。

牧師「あの、世界が終わった後に備えて懺悔をしませんか?神は全ての人の罪を、、、」

青年「世界が終わるとか陰謀論だからっ!そもそもアメリカと中国の、、、」

詐欺師「火星ロケット投資ぜったい来るから。絶対やっといたほうがいいって。アツいよ!俺の知ってるタモツさんすぐそこに、、、まじスゴイ人だから」

理絵N「人は一人では生きていけないと、昔の人は言った。だからどんな関わり方をしてもとにかく繋がりたがる。そしてそれを絆と呼ぶ。でもそこには良くも悪くもおもわくが存在する。結局、自分に都合のいいようにうまく他人を利用したいのだ。良くも悪くも」

ユーチューバー「あ!いましたいました~世界を救う理絵さんを発見しました!今どんな感じすか?やっぱ緊張とかすんすか?(一緒に画面内に入って髪の毛をいじって整える)あー、なんかお願いします!ひとことお願いします」

 

S高円寺パル商店街 BGM ※イメージはこちら

歩いてくる絵里菜。店の前で拳銃を構え、入店。

 

S店内

ユーチューバーのみけんに拳銃を突き付ける絵里菜。

ユーチューバー「え?」

絵里菜「配信やめてください」

ユーチューバー「え?え?」

絵里菜「配信やめてください」

ユーチューバー「え?え?」

絵里菜「日本語わかりますか?は・い・し・ん!配信やめてください」

ユーチューバー「え?え?」

絵里菜「次『え?』って言ったら撃ちます(引き金に指をかける)」

ユーチューバー「あ?ああ?あ、ムリムリムリ!」

絵里菜「(左手で左胸の内ポケットから警察手帳を出して見せながら)警視庁警備部の絵里菜と申します。あなたの行為は国家の機密を漏洩する犯罪行為です。特にこの非常時ですから、この場で射殺することもできます。いまさら死体がひとつ増えたってたいした問題じゃないですよ(撃鉄に指をかける)」

ユーチューバー「・・・」

絵里菜「言ったこと理解でしました?早く立ち去ってください」

ユーチューバー「すいません、ほんとすいません(走って逃げる)」

絵里菜は警察手帳をしまい、拳銃を右の内ポケットにしまう(実際は入らないのでフリをして次のカットからは持たない)

ユーチューバーが戻ってきて、理絵と記念写真を撮って逃げていく。

絵里菜「理絵さんお疲れ様です。世界を救うお心構えはよろしいでしょうか?」

絵里菜の方を向く理絵、また正面を向いて酒を飲む。

絵里菜「大切なお体です。ほどほどにされたほうがよろしいかと」

もう一度絵里菜を見る、見つめ合う二人。

理絵はむせて口を両手で抑え(吐きそうになっている)外へ行く。

絵里菜「・・・もー、ねーちゃん!なんなん!(追いかけおいかけようと体を反転)」

店員「あちょ!お勘定!」

絵里菜「ええ!?なんなん!?(右の内ポケットから財布を出しながら)領収書ください!」

 

S

空に浮かぶ隕石

 

S葛西臨海公園 ※イメージはこちら

芝生に寝転がって隕石を見ている理絵(口を開け、右手の甲を額に置く)。

理絵N「人生はトレードオフ。何かを手に入れられるのは、何かをあきらめた人だけだ、、、至福の酔っ払い時間と引き換えのうこの頭痛、、、うー、頭痛いよぉ(横にゴロゴロ転がる)、、、こんなアル中の救世主に救われる世界ってなんなんだよぉ(止まる)。み、水(立ち上がって歩き出す)」

× × ×

ふらふら歩いている理絵。

理絵N「いろんな人にいろんな才能がある。その才能によって人生は決まる。私にはテストでいい点を取る才能も、困ったときに助けてくれる友達を作る才能もなかった。そのかわり、空気が読めない発言で人を怒らせたり、病的に遅刻を繰り返したり、『生理的に受け付けない』っていう理由で嫌われる才能はたくさんあった。ねぇ神様、もう少し人間界のことを学んでください。そんな才能いらないんです!もっと必要とされる才能がほしかったんです、、、って(隕石を見上げる)その答えがこれですか?あの隕石を壊して地球を救うわけわからん才能をお与えくださったのですか?そりゃあまぁ全地球上の生き物から感謝されてきっとお金とかいっぱい貰えること間違いなしなんしょうけど。サウジアラビアの王様とかから」

通行人「あ、理絵さん?もしかして理絵さん?やばい!?有名人じゃん!(写真を撮る)握手してもらってもいいですか?やばい!やばい!(スマホをいじりながら去っていく)」

理絵N「撮っていいかって一言聞けよっ・・・うー」

 

S自販機の前

理絵N「な、ないっ!お金がない!「(体中のポケットに手を突っ込みながら)なんだよ!さっきのアイツ!やりやがったなぁ!スられたんかぁ!(自販機にもたれかかりながら)なぁ、あたしは世界を救うことができるんだよぉ!水の一本くらいくれたっていいじゃないかさぁ、、、」

ペットボトルの落ちる音。

理絵N「(驚いて)うっそ!願いが通じた?あたしってすごくない?」

絵里菜「(ペットボトルを取り出し)んなわけないじゃん」

理絵が受け取ろうとすると水を引っ込める絵里菜。

絵里菜「この水は、日本政府からの贈り物(ペットボトルを渡す)。ねーちゃん、いいかげん地球救ってよ。あたしも上司の上司の上司とかからプレッシャーきついんだからさー、昨日なんて警視総監に呼ばれて・・・」

水を受け取らずに歩き出す理絵。

絵里菜「ちょっなんなん!?」

 

S

逃げる理絵と追う絵里菜

 

S岸壁(対決箇所)

背中を絵里菜に向け、岸壁に追い詰められた理絵、吐きそうなって口を押さえる。

絵里菜「(拳銃を向けて)酔っ払い!そこまでだっ!おお、なんか刑事っぽい!そしてこの岸壁!火サスっぽい!もっかい言おう、そこまで!ああ、足痛い、、、アキレス腱切れてるって絶対これ(座り込む)酔っ払いのくせになんでそんなに早いんだよ」

絵里菜の方に振り返る。

絵里菜「(足をさすりがら)ねーちゃんさー、ホントに頼むよ・・・地球を救ってよ」

理絵「・・・」

絵里菜「わかってる」

理絵「?」

絵里菜「みんなあたしが悪いんでしょ!?」

理絵「?」

絵里菜「あたしの方がかわいくって頭も運動神経もよくて、警視総監からも期待されてる将来性もバッチリな上級国民だからでしょ?あとこないだもらった宝くじで1000万円当たった・・・そーいう!コンプレックスあるから、あたし困らそうとして逃げまくってるんでしょ!謝るから!昔からずっと・・・みじめな思いさせてたこと・・・だからあたしと会うの避けてたんでしょ・・・」

理絵が絵里菜の後ろから息を大きく息を吐く。

絵里菜「んん!くっさ!酒くっさっ!」

理絵「(後ろから抱きつく)あたしは酒があれば幸せだっつーの。でもさ、こうしてればまたあんたと遊べんじゃん?昔みたいに」

絵里菜「遊ぶって?」

絵里菜をオンブする理絵

絵里菜「酒くさっ!くさっ!くさっ!全身の毛穴からアルコール出てるって!」

理絵「あんたがあたしを必要とする限り、こうやって会えるじゃん?そんで鬼ごっこできるじゃん?」

絵里菜「・・・そんなの・・・別にいっつも必要としてるって」

理絵「嘘ばっか・・・連絡しても全然返してくれないしさー」

絵里菜「ねえちゃんバカ。料金滞納で止まってんだよ!政府の機密資料に書いてった」

理絵「ウッソ!税金でたて替えといてよ!」

絵里菜「そんなことに税金使えるわけないしょーが!」

笑う二人。

理絵「ごめん」

絵里菜「あたしもなんかごめん」

理絵「じゃあ1000万円ちょうだい」

絵里菜「え!あんなちょっと言ったこと覚えてんの?ダメー」

理絵「じゃあ海に捨てる」

絵里菜「ちょっと!」

理絵N「なんだか気恥ずかしい。大人なると言いたいことが言えない。やりたいこともできない。その制限を外すために、大人は酒を飲むのかも(夕日を観る)。この世界はいつかは終わる。世界の前にあたしたちは必ず終わる。必ず終りが来るのに、どうして人は一生懸命生きるのか?」

絵里菜「きっとこの何気ない、でもかけがえのない瞬間のためだ!」

理絵「え?」

絵里菜「だからさー!ねーちゃん!心の声だだ漏れてんだって!恥ずかしーーーーやーいやーい恥ずかし恥ずかし恥ずかしねーちゃん厨二病~(背中から降りて走り出す)」

理絵「うるさーい、1000万よこせー」

笑いながら走り去る二人。

理絵N「(走りながら隕石を見つつ)そうだね、この瞬間のために、ちょっと地球救っとくか(指を鳴らす)」

頭上の隕石が爆発する。

止まって空を見て驚く絵里菜。近寄る理絵。頭上には砕け散った隕石。

理絵N「この何気ない、かけがえのない瞬間のためにわたしらは生きてんのかも」

絵里菜「(理絵の方を向いて)いや何気なくないから。こんなこと何気なくフツーだったらヤベーから」

絵里菜の方を向いて笑って親指を立てる理絵。

向かい合って微笑む理絵と絵里菜、その頭上を砕け散った隕石が流星のように流れる。

✨2.海にて王様は星になりたがる

 

●S:電車の中

喪服を着てぼんやりと前を見ている恵梨香。
目線を上げると海が見える。

恵梨香N「海はいつもそこにある。

 

●S:砂浜

立って海の彼方を見つめている美奈。

美奈「バカヤロー!」

■タイトル『海にて王様は星になりたがる Dear innocent world』

 

S:
駅から出て、道を歩く恵梨香。

 

S:
落ちている空き缶に足を止め、見つめる。
恵梨香の声「あの、買ってきたけど」

 

■タイトル『半年前』

 

S:砂浜(回想)

美奈「買ってきましただろ!あたしを誰だと思ってんだ!王様だぞ!」

恵梨香「は・・・コ、コーラでございます王様(頭を下げて両手でコーラを差し出す)」

美奈「(手にとって)うむ、苦しゅうないぞ、では15年ぶりに病院抜けだしてのコーラを・・・(飲んだコーラがを吐き出す)うえっ!ひさしぶりの炭酸やべぇ!やべぇやべぇ!」

恵梨香になすりつけようと迫るので、逃げる恵梨香。

✕ ✕ ✕

砂浜に腰掛けて美奈の足をもむ恵梨香。

美奈「15年ぶりに走ったから足がいてぇよ。しっかりもめよ、筋肉痛になっちまうだろ」

無視する恵梨香。

美奈「(恵梨香の頭に手をおいて、顔を美奈の方へ向かせ)よく聞けよ、15年っていったらちょっとしたもんだよ、お前ごとき胃腸炎と比べたら月とスッポンだよ。5歳だったアタシが本日もう立派にハタチの大人だ。しかもそんじゅそこらのハタチじゃないぜ?カラマーゾフの兄弟を5回も読んで、あのろくでなしの兄弟の名前を全部言えるんだ、そんな二十歳がどこにいる?痛ったい!もうちょっと優しくもめ!」

ツボを押す恵梨香。

美奈「ぎゃあああ」

✕ ✕ ✕

美奈の肩を揉んでいる恵梨香。

美奈「もちろん酒もタバコもやっていい。でもやった瞬間即死だろうけどな」

恵梨香「・・・王様におかれましては太く短くがお似合いです」

美奈「うむ、わしはお前のそういう都会的センスが好きだ。毎朝朝ドラで現実逃避するところから1日を始める大馬鹿者と違って、『とにかく生きろ!』とか『生きてればきっといいことがある!』とか底の浅いことを言わんところが良いぞ」

恵梨香「・・・」

美奈「だからさ都会人、アタシが死んだら、あたしの灰を海にまいてくれ。だって墓なんかに入ったらえらいことだぞ、なんだかよくわかんない先祖と一緒にされて、宇宙が終わるまでパチンコと高校生で時間の止まった連中の思い出話を聞かされる・・・考えただけでゲロはいちゃうよ。あたしは死んだら素粒子になって、そんで星になる。知ってっか?人も星も構成物質は同じなんだぞ?あ、お前にはこの話難しいか?(ケラケラ笑う)」

神妙な顔つきで話を聞いている恵梨香、真顔でツボを再び押す。

美奈「ぎゃあああ」

 

●S:道~砂浜

歩いてくると砂浜に出る恵梨香。そのまま砂浜の方に歩いていく。
遠くに通る船、足を止めてその船をみつめる恵梨香。

美奈の声「(花火のゴミを拾って投げながら)病室からいつもこの海を見てた。あの船はどこから来たのか、どこへ行くのか。どこへもいけないあたしを乗せていってほしい・・・」

 

●S:砂浜(回想)

美奈「なんてありきたりなこと考えるかよ!じゃあなんて考えてたと思う?」
砂浜を歩いている美奈と恵梨香。恵梨香は海をスマホのカメラで撮っている。

恵梨香「・・・沈没しろ!」

美奈「おま、性格わりーなーお前、沈没ってお前、お前!お前おもしれーな!今まで病院で出会ったヤツの中で一番おもしれーよ!そんで性格わりーよ!」

恵梨香「嬉しくないんだけど」

笑う美奈と恵梨香。

美奈「よし、写真家を夢見るものよ!王様が君に最初の仕事をあげよう」

恵梨香「え?」

美奈「そいつであたしの遺影を撮ってくれ」

恵梨香「・・・遺影って」

美奈「今のあたしはきっといい顔してると思う。知ってる?プラシーボ効果」

恵梨香「・・・思い込み効果、だっけ」

美奈「なんだよ知ってんじゃん!・・・お前は明日退院だろ、今日が最後だ」

恵梨香「お見舞い、来るよ」

美奈「そういうのはいい、悲しいを通り越して腹が立つ。そんな嘘は100億人から聞かされてんだ」

恵梨香「王様、地球の人口はそんなにいませんよ」

美奈「うるさい!冷静に突っ込むな、さっさと撮れ」

 

✕ ✕ ✕

 

カメラを構える恵梨香、一度無表情になってから微笑む美奈。

美奈「あ、ちょっと待って!やっぱ動画にしよう!言いたいことがあるんだ!」

恵梨香「え?」

美奈「早く撮れよ!」

ムービーに切り替える恵梨香。

美奈「(スマホに向かって)おい!神とかいうやつに言いたいことがある、あたしは昨日まで全然いつ死んでもいいと思ってた。なのに今は生きたいと思ってる。なんでこんな楽しいやつをあたしところに送ってきやがったんだ!決心が鈍るじゃないか!人の心を弄んで楽しいのか!ふざけんなバカヤロー!アタシが死んで天国へ行ったら、いやきっと地獄だろうけど、鬼たちと一緒に本物の鬼ごっこしたりして地獄をすげー楽しくして、地獄の機能を麻痺させてやる。天国に行ったらお花畑に火をつけて、綺麗な川には毒を流して天使たちを皆殺しにしてやる!上から目線で好き勝手やってんじゃねー!死にたいやつを生かしたり、生きたいやつを殺したり、人間はテメーのおもちゃじゃねーんだよ(泣き出してしゃがみこむ)」

恵梨香は美奈に近づく、恵梨香は美奈の肩をだこうとするが美奈は拒否する。

恵梨香は無理やり美奈の肩をつかんで抱き寄せる。

泣き続ける美奈、恵梨香も泣く。

波が静かに打ち寄せる。


●S:砂浜

恵梨香は波打ち際まで歩いてきて、カバンから白い缶を取り出して、少し灰を手の上に出す(風から守るために少し握った形)。

手を上げて手を開くと砂が風に舞う。

空に舞う灰を見つめる美奈。

美奈の声「おーい!お前ホントに性格わりーなー!」

美奈の方に振り向いて笑う恵梨香。

美奈が笑顔でコーラを2本持って歩いてくる。

美奈「人の葬式勝手にやんじゃねーよ!しんじらんねー」

恵梨香「あ、王様、遺影が出来ました(遺影を渡す)」

美奈「(受け取って)信んじらんねー、ここでまでやるかフツー」

恵梨香「いただいた仕事はきちんとやりとげます」

遺影をやぶく美奈。

美奈「へん!ぜってー死なねー、生きてやるぞ!お、ほら、報酬だ」

恵梨香「ありがとうございます!(と言ってのみぐちを菜美に向けて飛び出した中身をかける)」

美奈「てめー!このやろー」

逃げる恵梨香、追いかける菜美。

笑う2人。

エンドロール

✨3.多元な彼女

●S:行きかう人々(イメージカット)

百合子N「毎日大勢の人とすれ違う。その中に未来の自分がいるかもしれない。だから私は世界をよく見る。少しでもマシな未来を見たいから」

●S:東京駅

駅の中を走っている百合子。

百合子N「この世界にはたくさんの時間軸があるらしい。例えばご飯のとき卵焼きを食べる宇宙と目玉焼きを食べる宇宙。選んだことによって未来が変わる、それがまたどんどん分かれて分かれていって、選んだ道のぶんだけ世界が生まれる・・・ってこと?

難しい理屈はともかく、もっと身近な心の問題の話をしよう。そう、どこでどんな道を選んでも必ず生まれるもの。それは『後悔』だ。

あのときこうしておけばよかった!あっちを選んでおけば良かった!誰でも一度は考えるでしょ?そしてもしできることならやり直してみたい!ってね。でもたいていの人はいいわけして行動しない。パレートの法則によると、100人いたら、実際に行動するのは25人。4人に一人。つまり、動き出すだけで価値がある!素晴らしい!

何が素晴らしいかって?ワタシは過去を変えるために動き出しているからだ!あ、実際は過去じゃなくて現在、そして未来。過去を変えればいろいろ変わる。映画なんかじゃよくあるけど、人類はついにこの禁断の魔法を手に入れた!

とはいえ、チャンスは多くはない。物事は慎重にすすめないといけない。とか言ってる私がさっきから走っているのは、過去を変えるチャンスに遅刻しそうだからだ。もしこの性格を直したかったら、生まれる前に遺伝子情報を書き換えるしかないのかも。でもそんなの自分って言えるのかな?」

■タイトル『多元な彼女 becomig who i was』

●S:カフェ内 ※イメージはこちら

誰もいないカフェにおそるそるゆっくりと入る百合子。

●S:イメージカット 夜の東京の時計

●S:カフェ内

カウンター椅子に座って、手を組んで考え込む百合子。カウンターにつっぷす百合子。首だけ右に向けて時計を見る。

百合子N「またやっちまった。全速力で走ってきたのに、2時間も間違えた。こういうおっちょこちょいなところが、私の人生を悪くしてると思う。え?じゃあ過去を変えても性格を変えないかぎり、人生は良くならないってこと?」

上体を起こして、ジャケットの内ポケットから拳銃を取り出して、体の正面に持ってきて銃口を見つめ、正面に銃を構えて打つマネをする百合子(銃口は左→右→真ん中)。
銃口の煙を吹き消す仕草。
カフェ内を見渡して退室。

●S:花やしき ※イメージはこちら

いろいろな乗り物にのって時間をつぶす百合子。

百合子N「10年前、あの場所で人生が変わった。あそこでプロポーズを受けて結婚しなかったら、、、そう考えない日はない。そりゃ、安定した生活が当然ほしかったけど、お金があれば幸せっていう考えは浅はかだった。モラハラ・義実家の干渉・親戚づきあい近所付き合い、、、おまけに役所は公務員にしてはありえない懲戒免職、つまりクビ!しかも理由が痴漢なんてもうありえない!しかも痴漢した理由を嫁の努力不足とかってあたしのせいにするかー!?ざけんじゃねー義実家のカスども!と、何度もこなしてきた脳内殺人も今日で最後。自分で始めたことなんだから、自分で終わらせる。そしてまた新しく、自分ではじめてみせる」

●S:イメージカット 夜の東京じゅうの時計

●S:カフェ内 ※このシーンでは過去の百合子とBの姿は見せない

物陰に隠れている百合子。
時計の秒針が動く。
階段を登ってくる足音。
ドアが開く。
百合子の心臓の音が響く。

過去百合子「あれ、誰もいない?」
B男「貸し切った。カウンター座って」
過去百合子「うん」

☓ ☓ ☓

カウンターに座っている過去百合子、その正面に立っているB。
B男「では、シェフのきまぐれディナーを」
過去百合子「えーなにこれ!?お子様ランチ?」
B男「お子様ディナー?じゃない?」
過去百合子「どうしたの?」
B男「どうしたのって・・・ずっと食べたいって言ってたじゃん。でも頼むの恥ずかしいって。だから作ったんだよ、ここ借りて、朝から仕込んでさー」
過去百合子「朝から?」
B男「うん、ほら、スゲーきっちゃった」
過去百合子「・・・じゃあ、いただきます、うっ!(ウインナーを吐き出す)」
B男「おい!食べてすぐ吐き出すなよ!マンガかよ!」
過去百合子「だってしょっぱすぎなんだもん、、、絶対塩振りすぎだって」
B男「そこは我慢して飲み込むのが愛ってもんでしょ!」
過去百合子「じゃあ自分で食べてみてよ」
B男「う・・・そんな話聞いちゃうとちょっと」
過去百合子「(B男の手をとって)じゃあ、あたしがおいしいやつ作ってあげるよ、毎日」
B男「え?あ、うん」
過去百合子「結婚しよ」
B男「え?あ、うん」
過去百合子「ちょっと、リアクションおんなじなんですけど。お子様ランチもプロポーズも一緒なの?」
B男「・・・後悔しない?」
過去百合子「やってもないのにそんなのわかるわけないじゃん?」

百合子N「忘れてた。プロポーズはされたんじゃなくてしたんだった。受け身じゃなくて自分で選んだ道だったんだ。それがうまくいかなかったからってなかったことにしちゃう?あのときの自分を否定する?捨てる?」

拳銃を見つめる百合子。握りしめ、過去の二人の方を見る。
また正面を向いて、カバンに銃をしまう。

●S:太陽が昇り、光に包まれる街。

●S:東京駅前の広場

歩いている百合子。

百合子N「大事なことをもうひとつ忘れてた。もし別の道を選んでも、後悔はしなかっただろうか?
それに、今の人生が不幸かなんてもっと先に行ってみないとわかんないんじゃないか?
少なくとも、あのプロポーズの瞬間は、わたしにとってかけがいのない時間だった。
この先もし、あたしがいい人生だと思えたら、あの瞬間はもちろん、きっと今の自分すら愛しく思えるはず。自分で始めたことなんだから、自分で終わらせる。そしてまた新しく、自分ではじめてみせる」

立ち止まり、空を見上げ、また正面を向いて、走り出す百合子。

✨4.七等星(ななとうせい)の夜を超えて

※蓮のセリフは全てナレーション

●S:道 BGM
蓮「(町中を走りっている)伝わらなければ、それは無いのと同じだ。特に人の心は。あたしの仕事はその心を伝える?っていうか運ぶ仕事。昔は手紙、今はメールにSNS。時代が変わっても本質は変わらない。そう、人は1人では生きられないのだ」
壁に寄りかかってため息をついてスマホをいじっているF。
蓮がFに近づき、スマホに手をかざすとメッセージが届く。
メッセージには『ごめん、残業入ったから今日無理』と表示。
怒りの表情を浮かべるF。
蓮「(一緒にメッセージを見、次にFを見る)伝えたってそれがホントかどうかなんてわからない。だってそのメッセージを受け取ったとき、相手は他の女と遊んでたから。(立ち去るF、その後姿を見ながら)人は平気で嘘をつく、傷つける。だから世界から戦争はなくならないのだ(スマホを取り出して見、また走り出す=仕事のメッセージが入ったということ)あたしの仕事はそのメッセージを届けること。そんな仕事があるのかって?当たりまえでしょ!手紙だって人が運んでるだから、メッセージだって人が運んでるの!ただし、今のテクノロジーじゃあたしをとらえるのは無理だけどね?(4人にメッセージを届ける、届いた人はそれぞれ喜怒哀楽の表情を浮かべる:カットを割る)」

■タイトル

●S:イメージカット
「人の心も星と同じ。星は昼間に星は見えない。でも見えないからってないわけじゃない。そこに存在はしている。見ようとしないから見えないだけ。あるいは想像力と、見ようとする勇気の問題かも」

●S:カフェ内 SE ※イメージはこちら
大勢で賑わっている人たちの横で、ひとりで食事をしている蓮。隣の席にカバンを置いている。
客Dと客Eが入室。
客D「(店内をぐるりと見渡し)えー満席じゃん、ありえないんだけど」
客E「ほんとだー」
客D「今日ってほんと最悪、運悪すぎ」
客E「あっちのほうもみてみようよ」
店内の奥に移動する客Dと客E。
蓮「(客Dと客Eを見ながら)人生に必要なのは努力でも才能でもない。運だ。隣に誰が座るかで人生が決まることもある。そいつが店員に怒鳴り散らしたりするようなカスなら大外れ。こっちの気分も悪くなる。逆に持ってきた料理をつまずいてぶちまけられても笑って許すスーパー優しい人なら大当たり。きっとあたしも優しくなれるだろう。いずれにしても、その光景に立ち会った人の心を、人生を決めてしまう。あんな思いをするくらいならあそこに行くのはやめようとか、あるいは自分もあんなふうな生き方をしてみたい、とか。まるで宝くじみたいだ」
入口②戻って来る客Dと客E。
客D「あんたが遅いからでしょー、なんでそんなにトロいの?何がしたいの?」
客E「ごめん」
蓮「宝くじも買ってみないと結果はわからない、ただ残念なことに、当たりくじはとても少ないのだ」
客D「あーむかつく!帰る(外へ)」
客E「え・・・(取り残されて立ち尽くす客E)」
客Eを見て小さくため息をつく蓮。
蓮「だから宝くじは買わない。当たることもないけど、少なくとも不愉快なことになることはないから(隣の席にオカれたカバンを見る)あたしの隣には誰も座らせない」
退店する客E。

☓ ☓ ☓

メッセージが届く。スマホを取り出して見る。
蓮「まじかよ!もう今日の仕事は終わったんだけどなー、しかも今日中に配達って・・・あ、誕生日だからか。しかもこれ業者のやつじゃん。いらないんんじゃないのぉ?ってあたしが決めることじゃないけどさ。めんどくさ・・・って場所ここじゃん!(顔を上げて大友を見る)あの人っ!やった!ラッキーィ!って仕事中じゃん!(壁時計を見ると18時)あと6時間かぁ、大丈夫!かな?(飲み物を飲んで激しくむせる)」
店長「(奥から出てきてレジへ、お金を出して財布にしまって歩きながら大友に)ちょっと田舎者さん。俺出てくるからあとよろしく。(立ち止まって振り返って)あ、壁が汚いってクレーム入ってたから今日中に全部きれいにしといてね。田中さんも」
田中「(テーブルをふいているが顔を少し上げて)・・・はい」
頷く大友。

●S:イメージカット BGM

●S:カフェ内
壁時計が23時30分を指している。雑巾で壁を拭いている田中と大友。
蓮「(大友を見ながら)オイオイオイオイ!真面目か!仕事中全然スマホみないんですけーどお?(テーブルの上のメニュー表に書いてある営業時間を見ると23時となっている)うっそ!もう終わってんじゃん!なんで帰らないの?もしかして忘れてんのかよー・・・おーい。・・・どーしよ(店内を見回す)よし!思い出させるためにデコっちゃおう!」

■ドンキホーテで誕生日を連想させるグッズを買って、カフェ内に張り巡らせる

※このシーンは特異なので分けて考える
※蓮の姿だけは田中と大友には見えておらず、貼ってるものは見えるという設定なので、蓮は田中と大友の背後の壁に貼りつけていく

●S:カフェ内
貼り終わった蓮。
店長「(入店)あれ?まだいたの?無駄な残業してんじゃないよ(レジに向かう)」
大友「・・・これでよろしいでしょうか?」
店長「(お金を出して数えながら)え?何が?」
大友「ここの汚れ、今日中にきれいにしておけって」
店長「え?そうだっけ?別に明日でもいいよ」
田中「・・・今日中っていうから大友さん、がんばってきれいにしたんですけど!あと、レジからお金出すのやめるって決めましたよね。金額合わなくなるからって。戻してもらえますか」
店長「今緊急事態なの!明日には戻すから・・・(電話がかかってくる)あ、もしもし!うん、ちょっと待ってねーお金できたからーそーそーそーうん(退出)」

☓ ☓ ☓

田中「なんなんだあのバカは、ごめんねつき合わせちゃって」
大友「(しゃがんでバケツで雑巾を絞りながら)いいですズラ。明日でやめるですズラ」
田中「え・・・やっぱり。でも辞めさせてくれないよたぶん」
大友「退職代行使うんで、大丈夫ズラ。バカと話すのは時間と無駄ズラ(雑巾を放り投げて物干しに引っ掛ける)」
田中「・・・」
大友「(立ち上がって)短い間でしたけどお世話になりましたズラ(頭を下げる)」
田中「あ、こちらこそ(頭を下げるて上げる)。次なにするの?」
大友「金星に行きますズラ」
田中「金星?ってどこにあんだっけ?ってか何するの?」
大友「金星でコーヒー作るズラ。出来たら飲んでケロ」
田中「大友さんって、、、行動力すごくない?全然そんなふうにみえなかったんだけど」
大友「田中さんも意外と熱いズラ。かわいい大友のために上司につっかかるなんて」
田中「全然話す機会なかったもんねー」
大友「それに、こんなふうに誕生日を祝ってくれるなんて、愛があるズラ(壁を見る)」
田中「え?」
大友「よく知ってたましたズラね。さすがバイトリーダー」
田中「え?あー、ああ!まぁね!」
蓮は「おい!」という表情で、自分の顔を人差し指で指す。
大友「・・・田中さんだけズラ、ここでオイラの言葉笑わなかったの」
田中「え、別にフツーじゃない?人はそれぞれだし」
大友「でもバカにはそれがわからんズラ」
田中「バカ・・・って、ここの、働いてる子たち?まぁ、そんなバカバカ言わないでさー。う~ん・・・まぁあたしも良くないところはあったと思う。でもそういう態度だと敵ばっかり作って大変・・・かも」
蓮「言ってることはわかる。でもそれじゃあバカに合わせて自分も落とせって?そんなことして作る人間関係に何の意味が?」
田中「まぁそのへんの雰囲気づくりはあたしがやんなきゃいけなかったんだけど、なんにもしてあげられなくてごめんね」
大友「・・・しょうがないズラ。駄目なら他に行けばいいだけズラ。金星とか」
蓮「昔の人は言いました。置かれた場所で咲きなさいと。でも環境が合わないところにい続けて、やがて枯れてしまうかも。そうなったとき、自分の人生に誰が責任を持ってくれる?自分に責任が持てるのは、自分だけ・・・」
大友「・・・」
田中「・・・とまぁお説教?は終わりにして、はい誕生日プレゼント(渡す)」
蓮「え?」
大友「なんでこれほしがってること知ってたんズラ?」
田中「だって、それ持ってるお客さんのこといっつもジーっとみてんじゃん。だからほしーのかなーって」
蓮「・・・」
突然声をあげて泣き始める大友。
大友「なんでそんなに優しいんズラかぁ!もっと早く教えてほしかったズラぁ!」
田中「だからちゃんと話せてっていったじゃん。言わなきゃつたわんないこともあるって」
蓮「・・・」
田中「じゃあ、誕生日を祝っちゃおう!大友さん向けのお祝いのスタンプは、これかな?」
メッセージを受け取る蓮、変なスタンプなので「え?」という表情。それを大友に送る蓮。
大友「田中さんのセンス・・・ダサいズラ!」
田中「あ、ひっどい!じゃあそっちも送ってみてよー!」
大友「あたしのはすごいズラよ、もうセンスのかたまりしかない、、、」
蓮「人の心も星と同じ。星は昼間に星は見えない。でも見えないからってないわけじゃない。そこに存在はしている。見ようとしないから見えないだけ。あるいは想像力と、見ようとする勇気の問題かも」
はしゃぐ二人を見つめる蓮。

●S:
歩いている蓮。
蓮「伝わらなければ、それは無いのと同じだ。特に人の心は。あたしの仕事はその心を伝える?っていうか運ぶ仕事。昔は手紙、今はメールにSNS。時代が変わっても本質は変わらない。そう、人は1人では生きられないのだ」
前に歩いている人がハンカチを落とす。
拾って落とした人を見、追いかける。

✨5.星の終わりとハードボイルドネバーランド

●S:行きかう人々(イメージカット)

●S:

スーツを着た宮子が、カバンを両手で前に抱きかかえ、早足で歩く。

宮子N「宇宙にはいろんな星がある、らしい。でも宇宙は真っ暗で何もない。そんなところにどうやって星が生まれるのか?それは超新星爆発ってのがカギ。星が爆発してできた物が集まってやがて星になる。つまり終わらせないと始まらない。きっと人生も同じだ」

十字路を右に曲がって壁伝いに立ち止まる。少し息切れ、額にはうっすら汗。両掌は壁に。
口は半開きで瞬きを5回して壁からゆっくり顔を出して、もと来た道に振り返る。
誰もいないので深呼吸。ゆっくり前に振り返ると(最初の体勢に)、頭上から大きな音がする。
見上げる。頭上に輝く太陽、その前を通過する宇宙船。
目を細めて宇宙船を見、頭を下げて前を見て(3秒歩き出す。

■タイトル『星の終わりとハードボイルドネバーランド』 バックは太陽

●S:部屋の中

家具やダンボールが置き乱れた部屋。テーブル代わりのダンボールの上に、鍋に入ったトムヤムクンが置いてある。

入室する宮子、誰もいないので部屋の中を見渡す(右→左)。

『ううううう・・・』と苦しそうな声が聞こえてくる。
怯えた表情の宮子(少し口と目を開け、頭を右→左→右→左→右)。
カバンを強く抱える宮子。前屈で半歩後ろへ。

ティック「ぶはっ!(ダンボールから出てくる=仰向けで側面から頭から飛び出す)」
上半身を起こして両手と頭を上げて激しく深呼吸するティック。

宮子「・・・ちょっと!?何してんの!?ひとりかくれんぼですかこの・・・」
ティック「(立ち上がって宮子の横へ、両手はグーで首のあたり)税金だよ!住民税だよ!区役所だよぉ!取り立てにきやがったんだよこの貧乏人からよぉ。だからとっさに隠れて(ダンボールにまた入る)、(頭だけ出して)この中で一酸化炭素中毒になってたんだよぉ。空気がうまいよぉ(激しく深呼吸)」

宮子「(息を吐き出して)住民税って、ここ、あたらしら勝手に住んでるのに?」

ティック「(ダンボールから出ながら)そんなのどうでもいいんだよ!誰でもいいんだよ!絞りとれるとこから絞りとる!それがやつらのやり方よぉ!それであんたに教えてもらったフルシカト作戦やってみたんだよぉ(ペットボトルの水を渡す)」
上着を脱いで放り投げ、座る宮子。受け取って水を飲む。

ティック「火星人のフリしても良かったんだけどよぉ、いまいちだったらばれるからよぉ、安全策にしといたよぉ」
宮子「やってみ」
ティック「(首にチョップしながら)ワレワレカセイジンダ」
宮子「じゃあ金星人は?」
ティック「(首にチョップしながら)ワレワレキンセイジンダ」
宮子「)おんなじじゃねぇか!(ダンボールの上の書類を見て)あ、なんだよこれ書いとけっていったじゃん!締め切りすぎたら受け付けてくんないんだから!(水を置いて書類を書き出す)げ、もう出ないとやばいじゃん!」

ティック「(お椀にスープを少し入れて)そんな怒ったらだめだよぉ。お腹がすいてるとねぇ、怒りっぽくなるもんだよ(宮子に顔を向けて)」
無視して書き続ける宮子。
ティック「(宮子の横に立て膝で移動して)ちょっと!トムヤムクンだよトムヤムクン!あんたが食べたいっていうから、ホントはタイの料理なのに、ベトナム人のあたしが民族の違いを超えて作ってあげたんじゃないかさっ!なのにその態度はないよぉ。日本人も薄情になったもんだよぉ。やってもらって当たり前だと思ってるよぉ感謝足りないよぉ。こうなったらセルフだよぉ、他人をあてにしちゃ残酷なこの世界で生きてけないよぉ!いいよもうひとりで味わうよぉ。しょせん人は一人で生まれて一人で死んでいく哀しい生き物・・・(スープをなめる)って辛っら!うわ辛っら!めっちゃ辛いで自分!ってか暑っつ!こんなんベロが熱中症なってまうやん自分!辛っら!暑っつ!辛っら!これめっちゃ美容にええのと違うん?代謝が良うなるわぁ!かぁぁっら!」

宮子「(首だけティックを見て)うるさい!静かにしろよ!間違っちゃうだろ!」
ティック「・・・(書類を覗き込んで)火星移民申請書、今どき手書きなんてさすがお役所仕事だよぉ!ハンコはおじぎさせないとダメなのかよぉ?」
宮子「(また書き始めて)あれ?あんたの本籍地ってどこ?」
ティック「(またスープをなめる)大阪府大阪市東住吉区・・・じゃなくてえーとなんだっけ?(床に置いてあるスマホを持って見ながら)ベトナムホーチミン市3区6地区グエン・ディン・チウ通り2046番地」

宮子「長っ、、、ベトナム国ベトナム市ベトナム町でいっか。あれ、あんたのフルネームってなんだっけ?」
ティック「(またスープをなめる)田辺ゆい、じゃなくてティック・・・タム?チーだったっけ?だよ」
宮子「ティック・トック・ペー?」
ティック「ちゃうわドアホ全然ちゃう。だいたい100歩ゆずってティックトックはまだ許す、最後のペーが意味わからん!めっちゃ林家入ってるやん!」
宮子「(書きながら)めんどいからペーでいっか。短い方が覚えやすくて友達いっぱいできるかもよ?パー子さんとか」
ティック「そりゃええわーって!それ友達とちゃうやろが!かみさんやかみさんー!」
宮子「・・・」
ティック「突っ込めや自分!シカトすんなや自分!そうやって自分守っとんのわかるけど!?」

宮子「はい(書き終えて書類をまとめて)地球で最後のノリツッコミ、やりきった?あとはこの金で(カバンをあさって封筒を出す、その中から100万円の札束を半分くらい出す)、火星への片道切符を買えば、準備おしまい」
ティック「(お金に飛びついて)すっげー、今どきよくこんなに現金もってんな(お金を持って立ち上がって顔と両手を上に)地球に残るお年寄りの皆さん!私達が他の星で子孫をがっつりこさえて地球人の!日本人の血を絶やさないようにがんばるから!どうか許してね!」
宮子「(壁によりかかって)・・・あー・・・すげー疲れた。もしかしたら通報されてて、警官が待ってんじゃねーかとか、帰りに強盗あうんじゃねーかとか、精神的に疲れたー(お腹がなる)」
ティック「(しゃがんで)お腹すいたねー、ほら座って(宮子の体を前かがみに、自分は横に座る)金はできたし(テーブルに乗せる)書類も用意したし(テーブルに乗せる)出発のお祝いね、(レードルで混ぜる)このトムヤムクンでねっ!」

宮子がいきなり鍋にスプーンを突っ込んで食べだす。
ティック「ちょっと!まずはいただきますしてからやろ!?」
驚く宮子。
ティック「あと!直はあかんわー直は、お椀によそって・・・(よそいながら)まぁ『おばあちゃんワタシ!どうしよう!会社のお金落としちゃって今すぐ500万円必要なの!』なーんてド緊張する芝居の後じゃぁ、ちょっとおかしくなるのもわかるけどねっ!はいっ!(宮子の前にお椀を突き出す)」

宮子「(受け取って前に置き、視線を落とす)・・・そうじゃなくて」
ティック「え?」
宮子「あたし・・・人と鍋って食べたことなくてさー。そういうルールとかわかんないんだよね」
ティック「(自分のをよそって宮子を見ながら)そーいえば、刑務所ん中、盛り付け制だったしね」
宮子「(お椀を見ながら)刑務所入るまでは、菓子パンとかおにぎりとかばっか。だからおせちも刑務所で初めて食べたんだー。まぁ、あんまりうまいもんでもなかったけど」
ティック「(お椀を置いて宮子を抱きしめて)大丈夫だよぉ、ティックがこれから母として、姉として、妹として、おせちでも、土曜の丑の日のうなぎでも、なんでも作ってあげるよぉ!そして宮子を立派に育ててあげるよぉ 生き直すんだよぉ。あ、生き直すっていえば(後ろのダンボールをあさる)・・・(振り返って)今日、誕生日でしょ。おめでとう(プレゼントを両手で渡す)」

宮子「(受け取って両手で胸のあたりで持って見つめ)誕生日?今日じゃないけど?」
ティック「いいんだよ。あたしたちの新しい人生がはじまるのが今日なんだから!新しく生き直すんだよ!地球人じゃなくて!宇宙人として!」

宮子「(開けると髪を切るハサミが出てくる)え?ハサミ?(チョキチョキと顔の前で切るマネ)」
ティック「自分で前に言ってたじゃん『地球でも火星でも髪は伸びる。生きてるかぎり髪は切らなきゃいない。ロボットに髪切ってもらうより、人間にやってもらうほうが安心。だから床屋はどこでもやってける』って」
宮子「(視線を落とす)・・・そんなこと言ったっけ?」
ティック「あたしも切ってもらってたし。ハサミ一本あればどこでも商売できる。新しい世界で新しい商売、新しい一歩を応援します」

宮子「・・・お金なかったから、ずっと自分で切ってただけなんだけど・・・。誕生日プレゼントってホントにあるんだ・・・初めて、もらった・・・」
泣きそうな宮子。

ティック「・・・え?何?もう気配?気配で察する感じ?泣く?って泣てる???いいのよ泣いても、、、(宮子を抱きしめて)その涙が、あなたの心にこびりついたどす黒い汚れを洗い流してくれるのです。これからその暗い過去を振り切って、新しい世界で生きるのです!」

泣いている宮子をの頭を撫でるティック。

宮子「(ハサミを置いて床に落ちている割り箸を折って鼻の穴にツッコんで)な、なんか、ヤ、ヤバイやつ!(あ、痛ったー)」
ティック「・・・え?何?どした!自分!?何が起こったん今?」
宮子「お、お礼っていうか・・・なんか笑ったほうがいいかなって。こういうとき。明るいほうがいいかなって。あんたからいろいろ教わったっつーか、勝手に覚えたっつーか、なんか楽しそうな一発ギャグ」
ティック「・・・そんな身体張った一発ギャグやんなくていいから・・・しかも意味わからんし・・・ヤバイやつってなんでもいけるやんそれ。空気読めや!いや読んだ結果がこれか?読む、読むのは大事やな、つーか読み方!そうシチュエーションを考える!そもそも笑いっつのーはやな・・・」

インターホンが鳴る。
ティック・宮子「!?(ドアの方をみる)」
もう一度インターホンがなる。

ティック「また区役所かよぉ?」
宮子「だったらいいけど・・・もしかして警察につけられた?」
ティック「見てくる。いざとなったらベトナム語でごまかすよぉ、しゃべれねぇけどよぉ」
ティックは立ちあがってドノの方へ。後ろ姿を見つめる宮子。

☓ ☓ ☓ 

ドアの前。のぞき穴を塞ぐティック。

ティック「はわーい」
納税課「お忙しいところ失礼いたします!区役所の納税課のものなんですけれども」
ティック「うちはここに住んでませんよー」
保健課「お忙しいところ失礼いたします!国民健康保険課のものなんですけれども」
ティック「うちは病院行ってませんよー」
年金事務所「お忙しいところ失礼いたします!年金事務所のものなんですけれども」
ティック「うちは年金もらえませんよー(ゆっくり忍び足で部屋に戻る)」

☓ ☓ ☓ 

戻ってきて宮子の対面でかがむティック。
ティック「どうするよぉ住民税と健康保険と年金の黒い三連星のジェットストリームアタックだよぉ。払ったら火星行きの切符が買えなくなるよぉ。払わなかったらまた刑務所に逆戻りだよぉ」
宮子「・・・航空券代もギリだしね」
ティック「もうあたしらは地球人じゃないのになんで税金払うよぉ!?ワレワレハウチュウジンだよぉ」
宮子「・・・あ!それじゃん」
ティック「?」

☓ ☓ ☓ 

誰もいない部屋。2人が奇抜な服装で歩いてフレームイン(左:宮子、右:ティック)
宮子「(首にチョップしながら)ワレワレハウチュウジンダ」
ティック「なんでそんな宇宙人みたいな声でんだよぉ(首にチョップしながら)ワレワレハウチュウジンダ」
宮子「もうちょっと、こう上の方にあてて (首にチョップしながら)ワレワレハウチュウジンダ はい」
ティック「(首にチョップしながら)ワレワレハウチュウジンダって、ってか自分!絶対捕まるわー自分!こんなんごまかされへんわ自分ー」
宮子「そしたらシカト!あたしの必殺技、フルシカト!嫌なことは、知らない!!!なしなし!」

ティック「・・・(首にチョップしながら)ジャアシュッパツダ」
宮子「(首にチョップしながら)アタラシイジンセイニ・・・アリガトウ」
うなずくティック
宮子・ティック「ワレワレハウチュウジンダ(と言いながら外へ)」

ドアの開く音。

納税課の声「あ、お忙しいところ恐れ入ります。住民税の方をですね・・・」
宮子・ティックの声「ワレワレハウチュウジンダ、ワレワレハウチュウジンダ」
保険課の声「あ、お忙しいところ恐れ入ります。国民健康保険料をですね・・・」
宮子・ティックの声「ワレワレハウチュウジンダ、ワレワレハウチュウジンダ」
年金事務所の声「あ、ウチュウジンの方にもですね、国民年金をですね・・・」
宮子・ティックの声「ワレワレハウチュウジンダ、ワレワレハウチュウジンダ」

納税課・保険課・年金事務所の声「あ、あのー」

宮子・ティックの声「ワレワレハウチュウジンダ、ワレワレハウチュウジンダ」

●S:イメージカット 街の風景

宮子N「宇宙にはいろんな星がある、らしい。でも宇宙は真っ暗で何もない。そんなところにどうやって星が生まれるのか?それは超新星爆発ってのがカギ。星が爆発してできた物が集まってやがて星になる。つまり終わらせないと始まらない。きっと人生も同じだ。今日で地球人はおしまい。次は何になるのかはまだわからない。でももう始めたんだ」

●S:

道を駆け抜ける宮子・ティック